サクラはバラ科サクラ属に分類される落葉広葉樹である。
原種はたくさん確認されており、エドヒガン、オオシマザクラ、
ヤマザクラ、カンヒザクラ(沖縄)、マメザクラなどである。
紀伊半島南部で発見されたカスミザクラ、タカネザクラ、
ミヤマザクラ、クマノザクラなども変性や交雑などから
数十種類の自生種として存在を認められた。
【江戸彼岸】エドヒガン
エドヒガンは原種の一つ。
樹高はおおよそ10m~25m。
葉は楕円形で5~10cm。
花は白から薄紅色。花弁は5枚で一重。
春の彼岸ごろに花を咲かせる。
萼の付け根が丸く膨らむため、見分けがつきやすい。
原種の中でも非常に長寿の種であることが知られ、
樹齢1,500年を超える神代桜や淡墨桜、樹齢1000年の樽見の大桜、
他にも樹齢300年を越える石割桜などの天然記念物が有名である。
花が多く咲特性から多くの品種の母種として使われている。
ソメイヨシノの片親として広く知られている。
【大島桜】オオシマザクラ
オオシマザクラは原種の一つ。
高さは15mになる。
葉は長さ5cm~10cm程度。
先端が尖った倒卵形または楕円形で細かい鋸歯である。
花期は3月から4月に、葉の成長とともに茎の先端から数個の花をつける。
花弁は白色で5弁、淡い芳香を持つ。
オオシマザクラは多くの園芸品種を生み出したサクラでもあり、
ソメイヨシノやカワヅザクラ(河津桜)の片親でもある。
伊豆大島北東部にある本種の株は、特別天然記念物に指定されている。
【山桜】ヤマザクラ
バラ科サクラ属の落葉高木のサクラ。
日本の固有種で、自生する11種ある基本野生種の中の1つ。
山地に生息している野生のサクラを総称してヤマザクラと呼ぶこともあり、野生種としては注意が必要。
開花は4月中頃で、開花と同時に明るい茶色の若葉が出る。
樹高は20m以上にもなるが、花は中輪で花弁は5枚の一重咲き。
花数は少なめで、花色は淡紅色。
樹木の成長に時間がかかるため、開花するようになるまでに5年以上かかることもある。
ヤマザクラは野生種で個体変異も多く、葉と花の開く時期や花色の濃淡、樹形なども様々である。
若葉の色に関しては赤紫色や黄色、緑色などもある。
江戸時代以前は、花見と言えば主にヤマザクラのことであり、吉野の桜とはヤマザクラを指していた。
木材としては家具の材料となることも多い。
【寒緋桜】カンヒザクラ
カンヒザクラは原種の一つ。
花の咲き方が特徴で、釣り鐘状の花が咲く。
花の色は、白から濃い桃色とかなり幅が広い。
個体差があるが、1月から2月上旬にかけて開花期となる。
花の大きさは1.5~2.5cm程度。
樹高は5m程度で、それ以上大きくならない。
葉は秋になると紅葉して美しい。
主に沖縄県で野生化し、沖縄で「桜」と言えばこのカンヒザクラを表している。
早咲きで有名なカワヅザクラ(河津桜)の片親である。
【豆桜】マメザクラ
マメザクラは原種の一つ。
富士山近辺や富士山麓、箱根近辺などに自生している。
フジザクラやハコネザクラとも呼ばれる。
マメザクラ(豆桜)の種は樹高が大きくならず、花も小さい。
花の時期は3月下旬~5月上旬。
花弁は五枚一重で、色は白から薄紅色。
花は1~2cm。
他の原種と違い、花を下に向けて開かせる。
木の肌は薄い灰色。
細い枝を長く伸ばし、葉は広い。
楕円形で、葉の端の鋸部分は切込みが深いことが多い。
【枝垂れ桜】シダレザクラ
樹高は8m以上に育つ高木。
咲き方は一重咲きの小輪で淡紅色。
関東地方の開花は3月中旬である。
枝垂れる特徴は、平安時代に「しだれ櫻」や「糸櫻」などが存在したことが、
古い文献に記録されており、シダレザクラの祖先であったと推定される。
当時は極めて珍しい物であり、日本各地にシダレザクラの古木が存在することで、
シダレザクラが栽培されて増殖され全国に広まったと考えられている。
枝がやわらかく、枝垂れるサクラの総称で、特定のエドヒガン系統の枝垂れ性の栽培品種。
【八重桜】ヤエザクラ
八重桜(ヤエザクラ)は八重咲きになるサクラの総称。
多くの品種が野生種のオオシマザクラとヤマザクラなどの交雑種として生まれ品種改良された。
八重桜はサトザクラ群に属し、ボタンザクラ(牡丹桜)とも呼ばれる。
6枚以上の花弁を付けるものを八重咲きの八重桜として区分している。
咲き方の区分として、6枚から15枚の咲き方を半八重咲、
5枚・6枚から10枚の花が一木中に混合している咲き方を一重・八重咲、
20枚以上の咲き方を八重咲としている。
ソメイヨシノの花が散りかけた頃に八重桜の開花期がやってくる。
1~2週間ほど遅く開花を始めるため、関東での見頃は4月初旬以降であり、開花から散り始めまでの期間が比較的長い。
花はかなり大きめで花弁が多いため、丸くこんもりとした形になることが特徴。
【染井吉野】ソメイヨシノ
ソメイヨシノに代表される一般的な花弁は5枚。
この咲き方を一重咲きと呼ぶ。
満開時の美しさは格別である。
江戸時代中期から末期にかけて園芸品種として確立したとされている。
母をエドヒガン系統、父をオオシマザクラ系統の遺伝子の交配で生まれた日本産の栽培品種のクローン。
開花が華やかであることや若木から花を咲かせる特性が好まれている。
花色は咲き始めが淡紅色で満開になると白色に近づく。
エドヒガン系統と同じように、満開時に花だけが密生して樹木全体を覆う特徴があるが、
エドヒガンよりも花が大きく派手である。
開花時期は3月中頃から後半。
エドヒガン系統の花が葉より先に開く性質とオオシマザクラの大きくて整った花形を併せ持った品種。
ソメイヨシノは人間の手により接ぎ木などの方法しかないため、貴重な栽培品種である。
【里桜】サトザクラ
サクラの栽培品種の総称。
野生種に比べて園芸品種は数がとても多く、花弁の数や色、花の咲き方を改良しようと
古代から多くの園芸品種が生まれ、日本では固有種・交配種を含め600種以上の品種が確認されている。
品種群の中には、天然記念物に指定されているものも少なくない。
江戸末期に開発されたソメイヨシノ(染井吉野)は明治以降、
全国各地に広まり、サクラの中で最も一般的な品種となった。
里桜(サトザクラ)は、オオシマザクラを基にして開発されたものが多い。
オオシマザクラにヤマザクラ、エドヒガン、カスミザクラ、マメザクラなどを掛け合わせたものとされている。
サトザクラの歴史は、人々がサクラを庭に植え始めた平安時代の頃から品種改良が行われ、
交配や変異、野生からの品種育成が繰り返された結果、多くのサトザクラが生まれた。
しかし、人里で開発されたサクラをサトザクラという場合があり、混同分類されることもある。
人間の観賞用に改良されてきたため、花びらの数の多いものや、見栄えのするものを選んで作られてきた。